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四季折々の中津川

涼しさと安らぎの夏の中津川

カッパ天国だった夏の思い出

川遊びで人気があった水道橋下流の砂防堰
川遊びで人気があった水道橋下流の砂防堰
 中津川の夏の風物詩といえば、海パン1枚で河原を走り回るカッパたちの真っ黒に日焼けした姿でした。カンカン照りの日には、頭に水中メガネ、手には網やヤスなどを持った子どもたちが大勢繰り出し、水中に潜っての魚獲りなどに歓声を上げていました。

 
杜陵小学校前の川で自然に親しむ親子
杜陵小学校前の川で自然に親しむ親子
 杜陵小学校付近のダンゴ岩と水道橋下流の砂防堰などは、子どもたちに特に人気があった場所。以前の中津川は水量が豊富で流れも早く、川遊びには絶好の環境だったようです。周囲が深みになっているダンゴ岩の上から勢いよく飛び込んだり、砂防堰の斜面を流れに乗って滑り落ちたりする様子は、20年くらい前まではよく見かけたものです。その後、安全上の理由から大人の同伴なしに河原に下りることが学校で禁止となりました。

水辺に咲く薄青の可憐な花

上の橋上流の河川敷に咲くワスレナグサ(中津川勿忘草育てる会提供)
上の橋上流の河川敷に咲くワスレナグサ(中津川勿忘草育てる会提供)
 昭和初期、中津川を友としたカッパのひとりには、伝説のスイマー、越戸優一選手がいます。旧制盛岡中学水泳部で自由形の選手として頭角を現し、日本大学時代には東京五輪候補選手にも選ばれましたが、日中戦争等の影響から東京大会が返上されたことで、五輪の夢はかないませんでした。昭和20年5月、フィリピンで戦死。県高校水泳競技新人大会の「越戸賞」にその名を残しています。
 ワスレナグサが咲く河川敷(上の橋〜富士見橋)の草刈りや清掃などの活動に長年取り組んでいるのが、中津川勿忘草(ワスレナグサ)を育てる会。同会の設立者である越戸国雄会長は越戸選手の甥にあたり、その活動は、伝説のスイマーが泳ぎを覚えた中津川の環境を守ろうと奮闘した祖父の精神がルーツとなっています。
 「祖父には、オリンピック出場の夢を断たれ戦死した叔父に対するいろいろな想いがあったと思います。河川敷を箱庭のようにきれいにし、湧き水をためるために小砂利を敷き詰め、水がいっぱいになったところにはクレソンやバイカモなどの植物が育っていました」。越戸会長の言葉からは、ワスレナグサなど多様な植物が花を咲かせる美しい水辺の情景が目に浮かびます。
 現在、ワスレナグサの生育を妨げる外来種オオハンゴンソウの繁殖が心配の種。同会では年2回、地元高校生、町内会、盛岡南ロータリークラブ等の協力を得て、この外来種の駆除を実施。ワスレナグサが少しずつ増えていることに、活動の成果が現れているようです。
 上の橋上流に咲くワスレナグサの開花時期は6月中旬〜8月と9月〜11月の年2回とのこと。越戸会長は「一旦枯れた後、種からまた発芽し、9月に再び花を咲かせます」と話し、薄青の可憐な花に出逢う日を楽しみに待っています。

アユが踊り、ホタルが舞う

市中心部でのアユ釣り
市中心部でのアユ釣り
 中津川では7月5日にアユ釣りが解禁。市中心部を流れる清流を舞台に、釣り人がアユを追う光景が8月いっぱいぐらいまで見られそうです。上州屋盛岡上堂店の久保敏也さんに、中津川でのアユ釣りの面白さについてお聞きしたところ、「市中心部でアユ釣りができるというのはなかなかないと思います。独特の雰囲気が味わえますし、近場で釣れるというのは魅力です」とのこたえでした。
 清流を好むゲンジボタルが生息していることも、中津川の魅力のひとつです。盛岡城趾公園のホタルの里では6月下旬から7月中旬、綱取ダム下流域ではホタルの里よりも遅れて飛び回る姿が確認できたようです。放虫や生息環境の整備などに長年取り組んでいる盛岡ホタルを守る市民の会の藤井栄二会長は「大きなホタルが宙に浮かんで、ゆっくりと光って。初めてゲンジボタルを見た時の感激は忘れられません」と話しています。
盛岡城址公園のホタルの里(毘沙門橋そば)
盛岡城址公園のホタルの里(毘沙門橋そば)
 杜陵小学校は、目の前を流れる中津川をテーマにした総合的な学習(5年生)やサケの稚魚放流などの活動に力を入れています。「総合的な学習をきっかけとして、自分たちの地域のなかで昔から大切にされている、みんなの憩いの川を大事にしていかなければという気持ちを持つようです」と同校の小原竜二教諭。
 夏のカッパ天国は昔話になりましたが、ふるさとの川を愛する心は、時を越えて子どもたちにしっかりと受け継がれています。